生保サバイバル


先週の日本経済新聞の2面記事、『迫真』は「生保サバイバル」というタイトルでの連載でした。国内の金融機関、しかも資産運用部門で勤める身としては言及しないわけにはいきません。

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発端

そもそもの連載の背景(おそらくです)は、今年に入ってからの国内生命保険会社の活発なM&Aでしょう。昨年第一生命のプロテクティブ社買収を皮切りに、今年の7月は明治安田生命のスタンコープ社、8月には住友生命がシメトラ社、極めつけは日本生命が三井生命の買収という極めて活発な生保の動きが、かつて海外不動産等を買い漁った「ザ・セイホ」の動き に重なったからでしょう。もっとも今はどちらかというと生き残りをかけた再編という感がしなくもありません。

そんな中でも異色なのは、やはり日本生命でしょうか。
他の生保会社がこぞって米国の保険会社を買収する中で、日生は国内生保、しかも青息吐息といわれている三井生命の買収という衝撃の動きをしたわけです。もともと三井生命は系列的にも住生との買収報道があったぐらいですから、驚かれるのは無理もないことでしょう。

日本生命の真意

今回の買収の意図はどこにあるのか。報道されている話では、3つあります。
1つ目は三井系列企業へのコンタクト。これは昨今の企業保険の苦戦を打開する手段と言われていますが、効果の有無は未知数といえるでしょう。そもそもそんなに簡単に契約が取れりゃどこも苦労しないわけで・・・

2つ目は三井生命が力を入れていない窓販を合併により取り組むという点。生保のマルチチャネル化が進んでいる現在においてはなるほどなという所ですが、保険商品全般を取扱った経験のある私としては、ぴんとこないというのが正直な所です。そもそも窓販や代理店で売るにしても商品性に魅力がないと当然売れないわけです。三井の商品にそれがあるのか・・・。
それとは別に、日生の商品を三井住友系列の銀行窓販で優先的に取扱ってもらうという点もあるのでしょうが、それとこれとは別の話ではといった感じです。まぁ実際の所、そのあたりの取決めはまだわからないですが、もし日生の商品がSMBCやSMTBで優先的に取扱われるというのであればそれなりのインパクトはあると思います。

3つ目はトップラインのアップ。これはわかりやすいですね。日生は平成26年度にトップラインで戦後初めて首位の座を奪われてしまったわけですから、営業担当役員や社長は是が非でもという感じなのでしょう。どこでもそうなのでしょうが、社長や役員など偉い人は自分の代では大きな失敗をしたくないわけです。会社が存続する限り語り続かれるわけですから。

大まかに言われているのは、上記3つだと思うのですが、改めて見てみると、もし3つ目だったらなんとまぁといった感じです。本当は保険商品の選び方について書こうと思ったのですが、それはまた別の記事で。

ちょっと小話

記事でも言及されていたことですが、日本の生命保険会社は、比較的高い予定死亡率を前提に商品設計しているそうです。 保険業に占める利益の源泉は3つあります。

その1つの死差益(想定していたよりも人が死ななかったために生じる利益)が、保険会社の利益に占める割合は極めて高いとのことです。一方アメリカの生保会社の利益に占める死差益の割合は極めて低く、アメリカの会社は純粋に運用益等で利益をとりに言っている。

これを見ると国内生保の極めて安定志向の運用方針であったり、あるいは米国の生保会社を買収し、その運用ノウハウを吸収する予定なんだろうなとか、はたまたTPPの流れを受けて、死差益依存の日本の生保業のあり方は続くのだろうか・・・などとも考えられて非常に面白いなぁと感じた次第です。

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